■サンクス効果
貢献度を評価して意欲を引き出すのが、サンクス効果です。結果だけを評価するの
ではなく、結果に到達したプロセスの「どの部分」が、結果に「どのように」反映したか、因果関係を分析して、正しく評価することで、自己効力感を育むようにします。因果関係を理解して、プロセスの「どの部分がどのように」貢献したのかを知ると、良い行動をさらに続けたくなります。必然で良い結果が出ます。
■スポットライト効果
スポットライト効果はサンクス効果に似ていますが、サンクス効果が「仕事の内容」そのものを具体的に評価するのに対して、スポットライト効果はその名の通り、「本人」にスポットライトをあてて、称賛する行動です。たとえば「今月の最優秀メンバー」というように、名前と写真を貼り出すというのもそのひとつです。いろんなアイディアで盛り上げることは可能なので、わくわくする様な企画で、他の参加者が「あんなふうになりたいな」と思うようにすることで効果を拡大したいものです。それにしても、サンクス効果あってのスポットライト効果であることを忘れないようにしたいものです。
■自己効力感
サンクス、スポットライト効果は、ともに自己効力感にプラスの影響があります。自己効力感とは、カナダの心理学者アルバート・バンデューラが提唱した心理学用語で、目標に到達する能力に対する自分の感覚を表現したものです。
「自己遂行可能感」・・・つまり自分の目標達成能力についての有能感を表しています。
これに似たものに自己肯定感があります。自己肯定感は自尊心のことで、セルフエスティーム(self-esteem)です。こちらは自分自身の価値に対する感覚を表現しています
人がある行動を起こそうとする時、自分がどの程度うまく行動出来そうか、その程度の予測によって、その後の行動が予想に適応した形で起こります。そのときに働く力が「自己効力感」です。
ある課題と向かい合った場合、自己効力感の高い人は、「自分にはここまでできる」と予測することで、「よし、やってみよう」とモチベーションが高まり、その後の行動に発展的につながり、その連鎖によって自己効力感が維持あるいは高まりが続きます。その点からもプロセスの効果的な行動を評価するサンクス効果は自己効力感にプラスの作用を発揮します。
一方、自己効力感の低い人は「その課題は自分にはできない可能性が高い」と予測するために尻込みする傾向にあり、課題と行動の間に断絶が起こり、その後の行動にはつながらなくなります。消え入るようだったモチベーションがさらに下がり成果も出ません。
つまり人がポジティブな行動を起こすには、自己効力感を通り抜けなくては始まらないと言えます。この傾向を日常的に、楽観的、悲観的と呼んでいますが、楽観とは、物事について気にしない性格を言うのでなく、むしろ逆で、細心の注意によって必要なことを正しく計画、準備して、合理的な行動を重ねて行くという確かな裏付けに支えられた態度と言えます。
自己効力感は、主に次の4つの源泉によって形成されるといわれています。
1.達成体験
自分自身の行動によって、達成した体験のことです。自己効力感を定着させるうえで、最も効果的といわれています。先に説明したオプション効果が寄与します。
2.代理経験
他者が達成するプロセスを観察して、想像をかきたて「自分にもできそうだ」と予測すること。自分自身が直接、体験できる範囲は限られていますが、代理経験を使うことで仮想体験が可能になります。代理経験で得られる自己効力感の影響は大きいと考えられています。プロセスを評価したサンクス効果が他者によい影響を与えます。
3.言語的説得
達成の可能性を、言語で繰り返し説得すること。しかし、言語的説得のみによる自己効力感は、容易に消失しやすいといわれています。言語的説得はきっかけでしかないと割り切って、早期に達成体験によって自己効力感を定着させるのが効果的です。マネジヤーの手腕が問われるテーマです。
4.生理的情緒的高揚 (エモーショナル効果)
苦手だと感じていた場面で、動揺することなく落ち着いていたり、身体的な変化が起こらずにすることで、自己効力感が強められることを言います。つまり緊張から自然に生じるストレスの洪水に流されないように感情の流れを整え、洪水を清流に変えます。
以上から言えることは、自己効力感は、小さな成功体験を繰り返して、蓄積することで高める一方、目標とするモデルを心理的に身近なところに見つけて成功を発見することで仮想体験的に、自己効力感を育てていくことができます。たとえばチームワークに潜在するポジティブな因果関係と物理的な因果関係を組み合わせて使うと相乗効果を発揮します。
自分自身にできるのは概ねここまでですが、代理経験を通じて、さらに自分の自己効力感を高めることができます。この能力がリーダーシップに発展していきます。
同僚、後輩、部下など周囲の誰かの自己効力感を高めたいと思い、言語的説得を根気よく続けることによって相手だけでなく、自分の自己効力感が高まります。さらに相手がチャレンジする代理経験を通じて、自分のスキルが高まると言うわけです。
自己効力感が高まると、自分から課題に取り組む意欲がみられるようになります。学習への意欲が高まるようになり、自律的な行動の変化が起こるようになります。すると慣れたこと、得意なことに飽き足らず、新たな業務、異なる分野など、いままでと違った行動が求められる時に意欲的になります。
自己効力感の増大に伴って、内発的な興味も育っていくようになります。新しいことに前向きに挑戦していくためには、スキルの根本に自己効力感の存在が必要だといえます。ライフスキルは自分と周囲の人との関係を自律的、発展的にコミュニケーションする力です。
ここまで説明してきた、目標の価値を高めてモチベーションを高める4つの効果、すなわち、ラダー効果、オプション効果、サンクス効果、スポットライト効果は、いずれも目標を魅力的にするだけでなく、自己効力感を高める働きをします。
つまり目標で惹きつけてモチベーションを高めて成功させ、その結果自己効力感がアップするという循環が人を育てる仕組みとして不可欠なのです。
併せて、達成の難易度のバランスをとり最適の可能性を作り出すメカニズムを機能させること、同時に顧客の購買モチベーションをアップすると、より速く確かに人が育つ仕組みを作ることができます。
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